第2回 CBD/COP10が世界に伝える日本の〈むらさき〉

2010年の日本で最も大規模かつ重要な国際会議であるCBD/COP10 ─── 第10回生物多様性条約締約国会議が開催されている名古屋国際会議場では、会場に隣接した野外の広大なエリアで、世界各国の政府関係者やNGO、企業などが、さまざまな活動について紹介する展示ブースを並べている。そのひとつ、日本の環境省のブースで「ムラサキ」を見つけた。以下、その展示の文面を紹介すると───

「生物多様性に根ざした日本の伝統色」
紫(むらさき)
Murasaki(Violet)

紫根(紫草の根)で染めた色。
紫系の色の総称。古代の日本では最高位の色だった。
紫根は、かつて武蔵野のシンボルになるほど群生していた。

実はこの色、パープルアイズの「Purple」の語源である「貝紫色」とは違って植物由来のムラサキ色なのだが、ときに「すみれ色」とも「江戸紫」とも呼ばれるこの色が、かつての日本で──特に関東ローム層の武蔵野台地においては豊かな植性を保っていたことを、和英対訳で世界に伝える展示になっている。時代劇で見る、病気の殿様が頭の鉢に巻く紫色の絹は、まさにこの「紫根」で染めたもので、その色味に邪気を払う効果があると考えられていたのだが、実際に殺菌などの効果を持つことは科学的にも立証され、漢方の生薬にもなっている。もちろん純粋に装飾のための染料としても使われてはいたが、絞り出せる染め汁の量がわずかなため、当時であっても高級品だったようだ。

今では自生の紫草を見ることはすっかりなくなってしまったが、かつての自然の姿を後世に伝えようと、東京都武蔵野市では貴重な種を分け、栽培の難しい紫草を自宅の庭などで育ててもらうためのボランティア育成プログラムにも取り組んでいる。いずれ近所の原っぱにまた紫草が可憐な花を咲かせて……と夢を見たいものだが、念のために書き添えておくと、その小さな花は純白だ。ただ、紫草が根を張るあたり一面の土は、はっきりと紫色に染まるという。

(編集者:ブウニイ ブウ)